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補陀洛渡海で知られる当寺は、仁徳帝の御代に印度より裸形上人が熊野浦に漂着し、熊野各地を巡歴の上、開かれたという。那智七本願の一寺として隆盛をきわめるが、文化五年(一八〇八)の台風で諸堂塔が破壊された。その後、仮本堂が建てられたが、現在の建物は平成二年(一九九〇)十一月に再建された、室町時代様式の高床式四方流宝形型である。

御本尊三貌十一面千手千眼観世音菩薩は平安後期の作と伝えられ、御丈一メートル九〇センチ、香木造立像で国の重要文化財の指定を受けている。観世音菩薩はその御名を称うる衆生の世音を観じて、いつでもどこでも示現し、救済くださる現世利益の御利生ある佛様である。

特に智恵、慈悲、勇猛の三つの力を合せた観音威神力と申す絶大な力の佛様である。この千手観音は四十本の御手を備え、各御手にそれぞれ法具を持ち、人間の我ままから生ずる苦しみを二十五種にかぞえ、そのひとつひとつをお救いくださる御手である故に、四十に二十五を乗じて千手となり、その手に眼を持ち給うので千手千眼と称し全智全能の広大無辺の偉大なる観音の力を表現している訳である。

那智の浜から生きたまま船に乗せ、僅かな食料を積み、外に出られないように釘付けをして沖に流し、観音の浄土すなわち補陀洛山に往生しようとする宗教儀礼が有名な補陀洛渡海で、この地から多くの渡海者が船出した。「熊野年代記」によるとこの補陀洛渡海は貞観十年(八六八)の慶龍上人にはじまり、平安時代に三回、室町時代に十回、江戸時代に六回が記録されているが記録洩れもあると思うので実数はこれより多いこともあろう。

渡海僧出発の様子は「那智参詣曼陀羅」に画かれているが渡海は十一月、北風の吹く日を選んで夕刻に行なわれた。当日渡海者は補陀洛山寺御本尊前で秘密の修法をし、続いて三所権現を拝した。見送りの観衆のどよめきの中を一ノ鳥居をくぐって浜に出て、白帆をあげ、屋形の周囲に四門及び忌垣をめぐらした渡海船に乗り伴船にひかれて沖の網切島まで行き、ここで白綱を切って観音浄土をめざし、南海の彼方へ船出して行ったのである。

一灯をともし、日夜、法華経を誦し、三十日分の油と食糧をたずさえて生きながら極楽浄土に旅立つ信仰であるが、近世になると金光坊が渡海を拒んで島に上がったが無理矢理に入水させられたという伝説もあり、生きながら渡海をするという慣習はなくなり、当寺の住職が死亡した場合、かつての補陀洛渡海の方法で水葬をするという儀式に変っていった。現在、当寺の裏山には渡海上人の墓がある。墓碑には「補陀洛渡海宥照上人塔」のほか、祐信、祐尊、光林、善光らのものがありいずれも「勅賜補陀洛渡海〇〇上人」と記されている。また享禄四年(一五三一)十一月に渡海した祐信(足駄上人)の渡海木礼、渡海上人位碑、渡海船に使用されたと伝えられる部材が現存している。

他に最近調査の結果平安中期の作と見られる御本尊脇侍の県指定文化財、広目天と持国天、享禄二年(一五ニ九)三月十八日の陰刻銘のある県指定文化財の銅花瓶一口、天正五年(一五七七)祐善が寄付した銅佛餉鉢のほか那智参詣曼陀羅、文武天皇と一条天皇の宸筆と伝えられる「日本第一補陀洛山寺」の勅額、二位尼平時子の塔、三位中将平維盛の塔などがある。

毎年一月二十七日に立春大護摩供星祭祈祷会、五月十七日に春まつり、渡海上人供養、七月十日に土用護摩供に先祖供養が行われる。

「※参照:補陀洛渡海上人遺跡補陀洛山寺」

 
 
住所
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町大字浜の宮348
宗派
天台宗
御本尊
三貌十一面千手千眼観世音菩薩
開基
裸形上人
創建
仁徳天皇御代
拝観料
無料
年中行事
 
1月27日
立春大護摩供星祭祈祷会
5月17日
春祭り・渡海上人供養
7月10日
土用護摩供・先祖供養

 
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